恋愛をするといつも、不思議な感情が湧き上がる。
性癖に近いような、でも誰に対してもそう思うわけではなくて、それぞれ相手によって全然違う欲望みたいなもの。
理性とか、理論で解き明かせない謎の衝動。
たとえば昔好きだった人、朝太陽が彼の顔を照らした時に白く光って見えた頬の産毛。
それを胸が苦しくなるほど愛おしく感じる気持ちで、私は「ああ、私は彼を心の底から愛しているなあ」と確信を持った。
愛でて愛でて愛でまくって、この人を母親のように包み込みたいと思った。
ある時恋愛をしていた人、私は彼の手指を食べたくて仕方なくなった。
細くて長い指、冷たい手、口に入れて飴玉みたく、舐め回したいと思った。
いつも彼の指ばかり見ていた。
性欲は悪者にされがちだし、軽蔑や穢らわしいものとして扱われることも多いけれど、
私はその時のそういう欲望を、とっても美しいものだと感じた。
もちろん相思相愛の関係においてのみ成り立つことだけど、産毛を愛すことも指を舐め回したいと望むことも、真っ直ぐで正しい愛情だし、何よりも美しくて綺麗な感情だと思う。
その美しさは当事者同士にしか分からないことだし、むしろ他人には到底分かるはずもない気持ちだ。
偏愛が何よりも直球の愛であること、狂愛が何よりもまともな愛であること、恋人を鳥かごに閉じ込めたいと思うこと、自分の愛で殺してしまいたいと思うこと、ぜんぶぜんぶ、なんの偽りも捻れもない心で、でもちょっと私はおかしいかもしれない。
こんな考えを理解してくれる人はいるんだろうか。
みんなそんなふうに思うことはないんだろうか。
聞いてみたいけど、狂っているとは思われたくないから言えないでいる。