知らない人に対しての警戒心がすごい。
でもその分知り合った時の警戒心の解け方もすごい。
昨日まで知らなかった誰かと寝た朝の、急に他人に戻る瞬間が苦手だ。
急激に悲しくなる。
ついさっきまで肌が触れ合っていて、髪を撫で合ったり手を繋ぎ合ったりしていたのに、一瞬で他人に戻るあの感じ。
どうでもいい世間話をして駅まで歩く道。
翌日には連絡すらとれなくなっている相手。
どんなに虚しさに押しつぶされそうになったり、自己肯定感を削り取られていったりしても私がそんな人と会おうとするのは、
知らない相手を知る瞬間に、「もしかしたらこの人と一体になれるんじゃないか」って希望を抱いているからだ。
当然そんなことはなくて、知らない人は身体だけ知ってる知らない人になるだけで、後に残るのは虚しさや悲しさだけなんだけど。
愛する人に愛されない世界で、その時だけでも私を愛してくれる人がいることが嬉しい。
たとえその嬉しさが一瞬で砕かれても、誰からも愛されないより全然いい。
最低な男に巡り会った時、その人を否応なしに攻めることができたらきっと私の自信は傷つくことがないんだと思う。
でも私は、そんな男の最低な言動を私のせいにしてしまう。私がもっと上手くやれれば、こんな結果にならなかったんではないかと想像してしまう。
苦しさは苦しさで消せない。
一瞬の間打ち消されるだけで、見えないところで積み重なって私をもっと苦しくさせる。
昨日まで顔も知らなかった人と抱き合って、明日になったらどこにいるかも分からない他人に戻っている。
苦しさが少し埋められてまた苦しさに変わる。
私は何をやっているんだろう、って思ってもどこにも行くことができない。